VIP EXPERIENCE

特別な人の特別な体験

歴史浪漫ただよう海峡の街
古美術と美食の老舗旅館

料亭旅館「みもすそ川 別館」

下関の旧裁判所正門を移築。門の右手には「御裳川古美術館」の看板が残る

歴史と名勝に恵まれた地
蒐集家の創業者のコレクション

源平合戦の昔から日本の歴史の要衝を担ってきた下関。「みもすそ川」は、壇ノ浦の戦いで追い詰められた二位尼(にいのあま/平清盛の正室)が安徳天皇と入水する際の辞世の句「今ぞ知る みもすそ川の 御ながれ 波の下にも 都ありとは」(※)に由来する地名である。

関門橋のたもと、火の山公園登り口や関門トンネル人道入口、「みもすそ川公園」にも歩いてすぐの場所にあるこの料亭旅館は、地元の方たちの会食利用をはじめ多くの文人が逗留した老舗。昭和22年創業の「下関会館ホテル」別館として、昭和33年関門トンネル開通の年に着工し、翌年開業した。現在は宿泊こそ6部屋だが、セミナーや会議ができる洋間に大広間、個室も揃えた立派な建物だ。創業者の西山音治氏(1884~1982)は下関市議会議員を務めた名士で、収集した美術品を古美術館として一般に開放していた。創業者の孫にあたる女将の西山玲子さんはその古美術館をギャラリー&カフェに改装。美術品に囲まれた非日常的な空間として広く親しまれている。

「創業者である祖父が亡くなってから25年経ちまして、陣笠など保存しきれなくなったものもございました。ご希望の方をご案内するくらいでしたが、締め切っているのはよくないので毎日風を通して良い状態を保てるようにギャラリー&カフェに改装しました」。

創業者西山音治は古いものを大切にする蒐集家だったからか、手に余るものの相談が舞い込んできたようで、旅館ができる頃に建て替え工事が行われた明治20年建立の旧裁判所正門も移築。「菊花紋章の瓦が使用されていて、おいそれと捨てるわけにはいかないということで、解体してこちらに移築したそうです」と女将の玲子さん。

創業者の音治氏から拝命した「Le Cafe OTO」の広々とした店内にはテーブル席があり、陳列棚には音治氏のコレクションである古美術や昔の日用品がずらりと並ぶ。豊臣秀吉の大火鉢を利用したテーブル席やラストエンペラーの謁見玉座に座れる席など、博物館クラスの品を、見るだけでなく利用できるというのが贅沢この上ない。そのカフェで出しているのは、長野県産そば粉と少しの塩、水だけでつくるフランス・ブルターニュ地方の郷土料理ガレットだ。生地そのものの風味が良く、ランチ(11時~14時)は卵とチーズの「シンプル」(935円)から、写真の「ミートソース」まで食事系ガレットが5種類。レギュラーメニューに加え、旬の素材を取り入れた季節限定メニューも揃う。スープとサラダセットをつけるとガレットの上に新鮮なサラダを盛り付けてくれて、これが美味! オードブルからデザート、コーヒーもセットにできるコース(ガレット+715円)のほか、タコライスなども。カフェタイムにはデザート系のガレットやクレープなども楽しめる。

※「みもすそ川」は、伊勢神宮に流れる五十鈴川の別称で、平家が源氏に追われ海に身を投げる際、「海の底にも都がありますよ」と、8歳の安徳天皇を励ましたと伝えられる。

歴史浪漫と下関の味、
ミネラルの湯に癒される

料亭旅館として長く親しまれている母屋のロビーや廊下、客室まで、あちらこちらに美術品が飾られ、優雅な雰囲気に包まれている。創業者の音治氏は古美術の収集だけでなく、心酔する高杉晋作挙兵馬上像や二位尼像を私費を投じて建立。高杉晋作の銅像は挙兵した場所として有名な功山寺に移設され、観光客の目を楽しませてくれている。また、備前焼で作られた巨大な二位尼像は、今も「みもすそ川別館」の庭にそびえ立ち、壇ノ浦の戦いと平家滅亡に思いを馳せることができる。

館内に飾られた品々も、落ち着いた昭和の雰囲気を今に伝える。加賀の登城太鼓が玄関でゲストを迎え、斎藤茂吉、谷川俊太郎、安倍晋三、長嶋茂雄といった著名人の色紙も間近で見ることができる。大屏風が壁面を飾るロビーのテーブルは、細かな細工がみごとな韓国螺鈿。伝統工芸品の美とパワーに触れられるのも、この宿ならではの贅沢だ。

旅館のお風呂は関門トンネルの工事で岩盤から染み出し続けている海水を利用したミネラル豊富な湯。

「海水には地下水が2割ほど含まれていて、そこに68℃の湯を加えて適温にしてからお風呂に注いでいます。海に戻すしかないと言われた岩盤水を利用してはと、タラソテラピーに詳しい知人から勧められ、海水に関する知識が豊富な電力会社の方からもアイディアをいただいて実現できました」という逸話は、多くの人に長く愛される旅館ならではだ。大浴場が2つと貸切利用できる露天風呂が1つあり、海の恵みにどっぷりつかり、日頃の疲れを癒したい。

下関で老舗料亭旅館として長年愛されているこの宿で食べたいのは、もちろんふく。ふく刺し、皮、唐揚げに鍋と、ふく尽くしのコースは、ヒレ酒とともに堪能したい。職人技が光るふくの薄造りを盛り付ける大皿もまた有田焼など美しい工芸品で、目と舌で存分に味わう特別感にひたることができる。ふくの他に下関ならではのくじら料理のコースもあり、宿泊客以外も昼夜ともに会食利用ができるのもありがたい。

また、壇ノ浦古戦場跡や関門橋にほど近く、関門海峡花火大会の日は多くの人で賑わうそう。「この日は早めにお夕飯を食べていただき、海岸まで徒歩で行って花火をご覧いただけます」。

車で山の上の駐車場まで上れる火の山公園には展望デッキ「ヒノヤマリング」があり、関門橋とその下を行き交う船を眺められる。武蔵と小次郎の巌流島や美しい海が人気の角島まで足を伸ばしたり、しものせき水族館海響館や唐戸市場などの名所に立ち寄ったりと、下関観光の拠点としても理想的。歴史に詳しくなくても学びが豊富な土地柄である。

みもすそ川 別館
Le Cafe OTO(カフェ音)
  • 11:00~14:00/14:00~17:00(OS16:30)

  • 不定(公式Instagramにて告知)

  • 24席

  • あり カード/可

  • Instagarm: @le_cafe_oto