
笑顔で迎えてくれる船越久生(ひさなり)さん。「高校生に見られることもあります」という33歳。
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特別な人の特別な体験
福岡県「船越」
船越(ふなこし)
笑顔で迎えてくれる船越久生(ひさなり)さん。「高校生に見られることもあります」という33歳。
’24年11月、福岡にオープンした寿司店がグルメな人々の興味を引き付けている。春日市の人気店「菊鮨(旧店名:菊寿司)」から独立した船越久生さんが8席の客を迎えてくれる美しく居心地の良い店。玄関で靴を脱ぎ、畳敷きのカウンターに並ぶのは、老若男女幅広い客の姿だ。「『菊鮨』の大将が宣伝してくれて『菊鮨』のお客さまをはじめ、東京からも足を運んでいただいています」。
7年待ちと言われる八女の鍛冶屋謹製の包丁は、独立に際して「菊鮨」の大将からの贈り物
簾戸(すど)は祖父母の家で使われていたもの。手仕事の趣きが空間に味わいをもたらす
玄関で靴を脱いで上がる畳敷きの店内。一枚板のカウンターが美味の饗宴の舞台
中学生の頃に家族に作った料理をほめられた記憶から、料理の道に進みたいと漠然と思い描いていたところ、「まずは本場で学べ」という父の言葉に、金沢の日本料理店で6年学んだ船越さん。自分の店を開くなら故郷の福岡で、ということで地元の業界事情を学ぶため、「菊寿司」の門を叩く。あまりの居心地の良さに7年間を過ごし、大将に次ぐ2番手と言われるまでに。満を持しての独立にあたり、祖父母の家を改装、金沢で学んだ和食と「菊鮨」で魅了された握りを提供する。食材は九州産にこだわり、朝5時に長浜市場に赴き直接買い付ける。「美味しところは顔を見せて買い付けたもの勝ちです」とネタの良さに自信をのぞかせる。口に入れるとホロリとほぐれるシャリは、澱粉質の少ない粒が比較的大きな米を使用。時間が経つとシャリの状態が変わっていくので、できるだけ美味しく食べていただきたいという思いから、18時(昼は12時)の一斉スタートだ。旬の食材を使用した料理と握りをひと通り食べると約20種にもなり満腹になるが、コースで出してないネタの提案やお代わりなど追加注文も聞いてくれる。「もう一周する方もいらっしゃいます(笑)」というから驚きだ。
父親が育った築70年の古民家の設計を建築士の父にお願いし、2人で寿司店を巡って研究した。「『菊鮨』と同じイチョウの一枚板のカウンターにしたくて探したのですがなかなかなくて。岐阜にあるかも、と言うことで2人で岐阜を訪れ、70mの一枚板に巡り合えました。値段も見ずに購入を決めて、後から驚きました」と笑う。店の完成後、父親にコースをふるまえたのも、感慨深いエピソードだ。
「『菊鮨』との違いを指摘されることもありますが、大将から『真似は決してするな』と言われたので、自分のスタイルを貫いていきます」。
7月のコース(22,000円~)より、クエのお造り。夏場のクエ(アラ)冬場のそれより小さく重さにして5kgほどだが、旨味が凝縮。船越さんは敢えて夏場のクエを好んでネタにしているのだそう
福岡・大島で捕れた173kgもの大物のマグロの赤身。甘味と旨味が濃い
ホロリと口の中で崩れるシャリとの相性も抜群の天草のコハダ。技量とセンスが出る品なので、食べた時の表情を確かめたくなるそう
地もののタコとズイキ。出汁で炊いたタコは柔らかく旨味たっぷり。器は唐津など、全国の古美術品を使用する
ハモのゴボウと大葉巻きにトウモロコシの天ぷらを添えて。丁寧に処理した地物の食材が奏でるハーモニーに酒が進む!
姪浜の鯛を2日寝かせ、旨味を引き出した握り。ねっとりとしたネタとシャリの鮮烈さの相性に思わず声が出る
福岡市南区野間4-11-27
092-541-3533
12:00~(水・金・土曜のみ)/18:00~
日曜
8席
あり(4台)
カード/可